2008/06/07 (Sat) 本編 第１話 １章 「始動―ハジマリ―」 ２部

迷ったら負けだと思う（＾＾；）

上下にゆれるトレーラーの中真壁博樹はうなされる様に転がると座席の上から落ち目が覚めた

黒い色彩の目は周囲の状況を探るがすぐに記憶が状況を知らせた

外の光景を見るとすでに寝る前の荒野から目的の町の光景になっている

「よう、覚めたか？」

「・・・ああ」

トラックの運転手はノリノリな歌をラジオで掛けながら真壁に言う

外には民間人が多くいて数人に一人はこちらを見ている

時間を知ろうと左腕に付けている腕時計を見るが秒針が動いていない事に気が付くいつの間にか電池が切れたのだろう

仕方なく運転手に時間を聞くが運転手はラジオの歌につれて変な歌を口ずさんでいた

「今何時だ？」

「んん？」

どうやら上手く聞き取れていないらしく真壁は再び、今度はさっきより大きな声で言う

そうすると運転手の男は歌を止めラジオの音量を小さくすると車に搭載されている現地時間時計を見る

真壁はこのゆれの中良く動けるものだと思う

「ああ今は…」


2154年　3月15日　現地時刻１００３時
オセアニア州　オーストラリア大陸中部　


真壁はもう一度寝ようと思ったがその気になれなかった

またあの夢を見ると思ったからだ

―思い出したくも無い

「…止めろ」

真壁がそう言うと運転手は言われた通りに車を止める

すると真壁は車を降りようとドアを開けるがはしごを使わずに１ｍ位の高さから飛び降りた

長く寝たせいか着地した拍子に体がふらつきひざを着きそうになる

数時間ぶりの地面を足で実感しながらも真壁はふらふらと３歩くらい歩き感覚を取り戻すと運転手に言う

「指定したところで待っていてくれ」

運転手は少し曇らせた表情を見せる、契約では指定した時間までに運んで置けば仕事は完了、運び屋はその報酬でプレゼントを買い愛しい娘の誕生日に間に合うつもりだったのだ

「追加料金だぜ？」

運転手の嫌味に真壁は何の意識もせずに

「好きにしろ」

と答えるとそれ以上言わず近くの路地の中に消えていった

残された運転手はくわえていた煙草を捨てると舌打をする

「あれがあの"伝説の傭兵"の息子か…拍子抜けだな」

運転手はそう言うとをトレーラー走らせた