2008/11/02 (Sun) ビスク・デュオ 六章

闇、
その中に点々とある明かりは所々を明るくしている
しかしその数は町に比べてあまりにも少なく見通しは悪い
そして聞こえる波の音、
やよいと直彦と大塚さん、そして男爵は港に来ていた
弥生は時計を見ると時間は１１時５５分を指す
『ホントに犯人が来るんだろうな？』
小声で直彦が言う
直彦はやよい達が来てから数分後に来たのだが何故か単身でやって来ていた
やよいが『増援は？』と聞くと『聞いてくれなかった』と返されてしまった
直彦は刑事の中で特にこう言った事件に干渉したがることで有名だった
現にやよい、そして『ビスク・デュオ』とも知り合ったのもそういった事件に関わっていた途中だった
結果として大半は護衛の完遂、更には犯人の逮捕をいくつかこなしてきたがそんな直彦のやり方に『付いていけない』、『命が足りない』、『無鉄砲過ぎる』などといわれてしまいかつての相棒も上司が同情して昇進して離れて行った程だった
いまは直彦だけで活動しているのだが直彦もそれには納得している、それでも時にはこういう風に増員の無視などもよくあることだった
『仕方ない、このまま犯人だけを確保する』
『それが上策ですね』
するとそこに大塚さんが遠くからやってくるのが見える
大塚さんには周囲の状態の確認と見張りの索敵を頼んでおいた
『でもどうして執事にそんなことができるんだよ？』
『ええ･･･何やら叔父様が戦場にいる際一緒に地雷原を走ったとか昔聞きましたが･･･』
『戦場って･･･大塚さんいくつだよ』
『たしか５０くらい･･･って聞きましたが』
『謎だ･･･』
そこに大塚さんがやよいの元に到着する
どうやら何も無かったようでどこにも怪我はしていなかった
『どうだった？』
『それなのですが･･･』
大塚さんは説明をするのだがおかしな事だった
警備は確かにいる、だが肝心のお取引相手が見つからないのだ
『という事は既に取引は終わったってことなの？』
『分かりません』
『･･･取引じゃないのかも』
直彦は二人の話を聞くとぼそりと呟く
―『取引』じゃない『取引』？
『それってどういうこと？』
『･･･外れたら多分犯人を逃すと思うけど･･･』
『大丈夫ですよ、きっと』
そういうやよいの表情は自信にあふれている
『根拠は？』
『ヒコさんの勘と経験は当たりやすいってところでしょうか？』
『そっか･･･ははっ』
『で、何なんですかその『取引』ではない『取引』って』
『ああ、多分･･･』
直彦はそういうと自分の予測を言い出した